ある雪の降る夕方。

男子校だからかみんな女子には優しい。
増岡君がみんなをたしなめるのを見ながら、『女子だから』という理由だけではない事も薄々は感じていた。

みんなが言うことは決してお世辞だけではない。
あたしは、確かに可愛くなったと思う。

自分で言うのも嫌らしいかもしれないけど、でも、そう自負できる努力をしてきたから。

可愛くなりたいと思った。
つりあう女の子になりたいと思った。
隣にいて、自信を持って彼女と言ってもらえるような、そんな子になりたいとずっと思っていた。

「ほら、コウちゃんタケル待ちだから。お前等帰るぞ」
「いいなータケルは。こんな可愛い彼女がいてさ」
「コウちゃんまたね」

増岡君達はそう言いながらあたしに手を振って歩き出す。
あたしも軽く手を振って、そうして一度、増岡君の方を見た。

あたしを見る彼と目が合う。
まっすぐなそれは、一度だけ俯いて、そのまま軽く頭を下げて前を向く。

マフラーは、口元に上げられたままだった。


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