ある雪の降る夕方。
最初は憧れだった。
中学に入学して、同じクラスになった学年でも人気者の男の子。
小学校の頃とは男子も女子も少しずつ変わっていて、勉強ができる、スポーツができる、先生に誉められる、そんな事より、『目立つ』事が人気者の条件だった。
タケルはまさにそのど真ん中で、人なつっこい性格も、整った顔立ちも、他の生徒とは違う栗色の髪の毛も、全部が人気者の条件に当てはまっていた。
あたしはと言うと、人見知りの激しい性格と、あか抜けていない外見、校則通りに着た制服と髪型。全部が人気者の条件に反していた。
別に人気者になりたいとは思っていなかった。
目立ちたいとも思ってなかったし、むしろ、変に目立ってしまって学校の中心的なグループの女子に目を付けられるのも嫌だった。
変に頑張って目立とうとしている子は、彼女たちの餌食になっているのを目の当たりにしていたから。
目立つグループは苦手だった。
でも、タケルだけは違った。
目立つ子も地味な子も関係なく、タケルはみんなと仲がよかった。
中学生特有のいじめとか仲間外れとか、タケルの周りには何一つなかった。
うちの中学がいわゆる『目立つ』子が多かったにも関わらず、大きないじめがなかったのは、タケルの存在のおかげだと思う。
女子の中には大なり小なりいじめみたいなものは存在していたけど、でも他の学校に比べたらだいぶましだった。
みんな、タケルにだけは嫌われたくはなかったから。
タケルが分け隔てなくみんなと接するから、いじめる対象になる人がいなかったんだ。