SWEET HOME
―――――…
目の前で、ジワジワと真っ赤に染まっていく花びら。
ボンヤリとした頭で、この光景をどこかで見たことがある、そう感じていた。
どこだっけ…
思い出せずに薄れていく花びらの輪郭とは反対に、あたしの耳にハッキリと聞こえてきた電子音。
重たい瞼をゆっくりと開くと、見慣れたリビングの天井が映った。
ソファの上で体を起こすと、お腹にかけていたブランケットが床にスルリと落ちた。
リビングはすっかり暗くなっていて、鳴り続けている電話のランプだけが唯一の光りだった。
フラフラと近付き、ディスプレイを確認しないまま、
「…はい、藤谷です」
受話器を上げると、彼の会社の同僚の男性からだった。
結婚式の時と、その後のホームパーティーで会ったことがある面白くて気さくな人だった。