SWEET HOME
帰ってきた彼に話したら、しばらく声を無くすほど驚いていたのを覚えている。


「浮気相手だったのかな?」


「さあな」


「怖いね」


「あぁ」


「もし哲っちゃんが浮気したら、あたしも目の前で手首切るからね」


「怖いこと言うなよ」


「しなきゃいいんだよ」


「当たり前だろ。オレには真美だけだ」


そう言って優しくキスをしてくれる彼に、あたしも微笑んだ。


どうして今思い出したんだろう。


彼に守られて生きているあたしとは、関係のない世界のお話なのに。


なんとなく心がザワザワして、落ち着こうとお腹を撫でてみる。


確かに感じる温もりと、もう1つの命。


これは、一瞬で終わってしまう幸せなんかじゃない。


そう心の中で呟いた。


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