雨粒のワルツ
「お互いにいろいろ大変だよね」
うつむいた私にセンパイはそう言って手を放す。
「え?」
政治家の娘なんて、嫌がられると思ったのに・・・
「ん?」
センパイは、何もなかったような顔で私をピアノの脇へと立たせた。
「今日は、キミ・・・いや、梨花ちゃんとの初めてのセッションだね」
その笑顔に鼓動が一気に加速する。
名前・・・呼ぶなんて反則。
私は顔を真っ赤にしたまま、バイオリンをケースから取り出し弓を構えた。
曲が終わると途端としんとする音楽室に、雨の音が響く。
何を言えばいいのだろう・・・
この気持ちは言葉では表現できない気がした。