アイムホーム
「お坊ちゃんじゃなくて、なんであんなマンション持ってるの?あそこは賃貸じゃないわよね?」
鋭いな・・・・
あのマンションは父親が、独り立ちする最後の手助けだって用意してくれたものだ。
地方は都会と違って、よそ者が家を借りるのが少し大変だからと・・・
「ね、もしお金持ちの遊びとしてなら・・・」
俺はそこまで聞いて、立ち上がった。
「・・・すみませんが、これ以上プライベートに立ち入らないでもらえますか」
少しきつい言葉だとは思ったけど、本心だった。
俺はただ金に頼って遊び暮らしてきたわけじゃない。
いきなり放り込まれた海外での生活にそれなりに苦労して生きてきたんだ。
これからだって、親に頼るつもりなんかこれっぽっちもなかった。
「すみません、ごちそうさまでした」
何も言えずに俺を見上げているオーナーにそれだけ言うと玄関に向かう。
玄関には2着のウェットスーツがかけられていた。
片方はボロボロで大きく破けている男物だった。