アイムホーム
ああ・・・そういえば、救急箱があったな・・・
引越しの準備の際、心配だからと亜澄に詰め込まれた救急箱があったことを思い出す。
クローゼットの奥に放置した救急箱を開けると、未開封の薬や絆創膏などが一揃い入っていた。
その中から解熱剤と冷却シートを持ち出し、客室に戻る。
「・・・ケン・・・ケン・・っ」
ベットの端に腰をおろすと、うわごとのようにフミがつぶやいて、手を伸ばしてくる。
俺は薬を2錠、水と一緒に自分の口に含むとフミの手を取り、そのまま口移しで薬を飲ませる。
フミは安心したのか、そのまますぅっと眠ってしまった。
俺はようやく肩をなでおろし、フミの腕を布団の中にしまった。
しばらく、安心して眠るフミの寝顔を見つめる。
気づかないうちに、自分の唇に触れていた。
フミの唇は、とても柔らかくあたたかかった。