俺様ナニ様王子様!?
少しだけガッカリしたけど気を取り直し、


「今大人気の若手俳優“矢吹渉”が出る舞台のチケットが当たったの。しかも一番前!!」


あたしは興奮気味にそう告げた。


しばらく何も言わずにあたしを見下ろしていた渉だったけど、


「んなの、いくらでもやるって言ってんだろ」


呆れた顔で、溜息をついた。


あたしは視線を逸らし、


「それじゃ意味ないもん」


「なんでだよ」


「あたしは渉の彼女だけど、その前にファン第1号なのっ」


そう言った後で恥ずかしくなって、熱を持った顔をギュウギュウと渉の胸に押し付けた。


「…樹里」


耳元で、渉の声が聞こえる。


いつも甘い声だったり意地悪な声なのに、今はとっても真面目な声。


そっと胸元から見上げると、


「サンキュ」


“矢吹渉”の笑顔がそこにあった。

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