あなたに、伝えたいから。
「……でも、プロなんて無理ですよ。親だって反対するだろうし」
品行方正に育ってきた両親は、僕が歌手になりたいなんて言ったら激怒するだろう。
「親とか、どうでもいいんだよ。
谷口は、なりたいの? なりたくないの?」
胸の奥にその声は凜と響いた。
この人は、一瞬で僕の奥にしまい込んでいた感情の鍵を開けてしまった。
歌いたい。歌で、誰かを感動させたい。
「僕…は、」
僕の答えを聞いた先生の口角が持ち上げられた。
「じゃあ、あたしが、谷口のファン一号ね?」
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