あなたに、伝えたいから。
「アキラ、いくぞー」
メンバーの一人に背中を押されステージに上がる。
わあ、という歓声にライブハウス内は満たされ、その声は壁に反響してより耳に響く。
ステージから観客を見渡すまでもなく、いちばん前にその人は立っていた。ピースをする先生は、あの時のあどけなさのままだった。
先生、俺は、まだ歌い続けます。
「――最後は、メジャー初めての曲です。」
歓声が、より大きくなる。
俺の人生を変えてくれた、世界で最も愛しい人へ。
先生に、こっそりさっきのピースを返した。
*あなたに、伝えたいから*
(だから、僕は、歌う)