『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
その作業、それは毎週末、咲が遊びの誘いを断り続けてきた理由でもあった。
床に座り、目の前に置いた蝋燭に火をつける。
その火に向かって強く念じる。
すると、蝋燭の火はいきなり燃え上がった。
細い蝋燭の上にテニスボール位の大きさの火がある。
なんともアンバランスな光景だ。
蝋も、見たことが無いような速さで溶けていく。
だが、数秒燃え盛ったかと思うと、すぐに火はもとの大きさに戻った。
咲は再び念じる。
すると火は風もないのに勝手に消えた。
これは手品の練習をしているわけでもなければ、オカルトな信仰をしているわけでもない。
数か月前から身についた、この変な力の訓練をしているのだ。