『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
穏やかな日々
暖かな日の光が部屋いっぱいに差し込む。
窓から見える景色は暖かく穏やかで、鳥のさえずりも聞こえる。
そんな普段と変わらない朝、その少女は家を出ようとしていた。
彼女の名前は鈴木香奈、この家の住人である。
現在中学3年、高校受験を目前にしたどこにでもいるような少女だ。
「香奈〜?今日は塾だから早く帰ってらっしゃいよ」
「わかってるってば!」
家の奥から声を掛けたのは、彼女の母親だろうか。
香奈は噛み付くように言葉を返した。
そして、強くドアを閉める。
「寒ぃ・・・」
そう、今は冬なのだ。
日の光は暖かくとも、外は十分冷えている。
受験まであと数か月、卒業も目に見えているところに来ている。
「(あたし、こんなんで高校受かんのかな・・・)」
香奈はため息を一つ吐き、学校へと歩いていった。