『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
「何これ・・・。どうなってんの?」
思わず声が漏れる。
分からない、さっきまで部屋の前だったのに。
大体、今は夜のはず。
なぜ太陽がある?
「ここどこ?」
咲は問うが、他に人がいないのだ、答えなど返ってくるわけがない。
咲は焦った。
普段あまり表情など出さないが、今の咲は誰が見てもわかる。
戸惑っている。
咲は自分の頬を思いっきりつねった。
「・・・痛い」
じんわりと鈍い痛みが両頬を包む。
夢ではない、と赤くなる頬を擦りながら思う。
「どうしよう・・・」
咲は呟いた。
もし、このような状況でなければ、春の陽だまりのようなこの草地で寝転んでいただろう。
だが、今は違う。