『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
「何ですってぇ?!」
その小さすぎる位のぼやきも、香奈の耳にはきちんと届いたようだ。
「女の子に重いなんて失礼でしょ?!」
「重いんだから仕方ねぇだろ?!」
あっと言う間に二人の論争が始まる。
咲はまたか、と思いつつも、二人を止められずにオロオロしていた。
そんな咲には目もくれず、二人はどんどんと白熱したバトルを展開していく。
「少しは痩せろよ!!」
「うっさい!!大体淳の身体が軟弱なのよ!!昂だったら絶対にこんな失礼なこと言わないわ!!」
「呼んだ?」
このバトルにいきなり声が混じった。
三人ははっとして振り向いた。
そこには昂がいたのだ。
三人の注目を一身に浴び、にこやかに手をひらひらとさせている。