『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
見間違いなんかじゃない。
そう、それはまるで魔法のようだ、と昂は思った。
驚いた。
だが、一番驚いているのは咲のようだった。
「(今のは何?)」
咲は自分に問う。
答えは知っている。
あれは、紛れもなくあの変な力だ。
しかし、いつもと大分違った。
あの時、「やめて」とは叫んだが「風で相手を飛ばす」なんて念じてはいなかった。
それなのに力は発動した。
それに、発動した瞬間、足元が一瞬強く輝いた。
これも今までになかった。
そして、何より大きな違いがその威力の大きさだった。
今までどんなに強く念じても、これほどまでに強い力が発動したことはなかった。