『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
咲は学校への道のりを歩いていた。
すると、後ろから名前を呼ばれる。
「咲〜〜!!」
後ろを振りかえると、香奈がこちらに走ってきていた。
「咲!おはよ〜!」
香奈は満面の笑みで咲に挨拶をする。
「おはよう」
咲も微笑みながら挨拶を返す。
「あ!咲が笑ってる!珍し〜」
そう、咲は中々笑わない。
否、あまり顔に表情を出さない。
「そういう香奈は何か不機嫌じゃない?」
「わかる?」
咲の言うとおり、今香奈は機嫌が悪い。
しかし、普通の者が見たら、一応香奈は笑顔なのだ、機嫌が悪いなんて分からないだろう。
反対に機嫌がいいと思う者が多いのではないか。
一緒にいる時間が長い咲だからこそ、香奈の心の機微がわかる。