『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
「黒髪黒眼だから、フーガかと思ったか?」
見透かしたような青年の言葉に縮こまる男達だけでなく、咲達も圧倒された。
青年は、はぁ、とため息をついた。
「確かに、フーガは黒髪黒眼の集団だ。だが、奴らは黒いチョーカーをしている。こちらの方々はチョーカーをしていない。よく見るんだな」
青年は威圧的に言葉を続ける。
「そもそも、戦意のない相手に剣を向けるとは…。師官学校はそんなことを教えたのか?よもや騎士道を忘れたわけではあるまいな」
男達は、申し訳ございません、と消え入りそうな声でもう一度詫びた。
「今回の件は不問にしよう。だが、二度目はない。任務に戻れ」
青年は冷たく言い放った。
男達は敬礼をすると、そそくさと丘を降りていった。