『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
「(すごい…)」
咲はこのやりとりの間、終始圧倒されっぱなしだった。
男らしさを感じさせる容姿、その口から放たれる相手に有無を言わせぬ言葉、気品が溢れる立ち振る舞い、どれをとっても彼は完璧だった。
「申し訳ありませんでした。お怪我はありませんか?」
彼はにこやかに咲に声を掛けた。
その表情に先程までの鋭さは消え失せていた。
「はい」
「それはよかった。申し遅れました、ラントゥール王国師団、副師団長、シヴァ・ユースと申します。以後お見知りおきを」
彼、シヴァはそう言うと右手を胸に、左膝を地に着けて咲に礼をした。
それはまるで物語に出てくる騎士が、姫にとる礼のようだった。