『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
「何?」
昂はぽそっと言った。
ラントゥール王国だって?
ふざけるのも程々にしろ。
半分睨み付けるように、昂はシヴァを見た。
反応がイマイチの四人に、シヴァは更に顔をしかめる。
「ですから、ラントゥール王国です。あなた方はこの大陸の住人ではないですね。どちらの出身です?」
「どこって、日本」
ぽろりと淳が言う。
「ニホン?聞いたことない」
「俺にとっちゃ、この国だって聞いたことねぇよ」
「そうですか。ではどうしてこの国に?」
「知らねぇよ。好きで来たんじゃねぇよ」
「淳、喧嘩腰になってるよ」
淳とシヴァの淡々としたやりとりを聞いていた香奈が、口調が荒くなってきた淳を嗜める。
淳はむすっとして黙り込んだ。