『彼女』に送る夜想曲【ノクターン】
「あぁ、そうか!」
突然シヴァが言った。
納得したように手をポンと叩き、何かをひらめいたような顔をした。
「何ですか?」
昂が聞く。
「あなた方は異世界からいらしたんですね。その黒髪黒眼はこの世界にはないものです。ってことは、リジムとロイが言ってたことは本当だったんだ…」
「異世界?黒髪黒眼?リジムとロイ?」
今度は香奈が口を開く。
その口は矢継ぎ早に分からない単語を並べ立てた。
「とにかく、私についてきて下さい。あなた方が異世界からいらしたならここは危険だ。安全な場所にお連れします」
香奈の質問を流したシヴァはそう言うと、再びぶつぶつと言葉を呟いた。
それは呪文のようであり、歌のようでもあった。
とたんに、シヴァの足元から赤い光が輝きだす。
それはだんだんと形をはっきりとさせ、シヴァの足元ぴったりに魔法陣のようなものができた。