運命の人
「──それで?手は繋いだんですかっ?」
ガヤガヤとしたチェーン店の居酒屋で、香織の2つ後輩になる滝川美弥子の二人で飲んでいる。
香織が今朝みた夢の内容を話して一呼吸おくと、すかさず美弥子が前のめりになり続きを急かした。
「ううん。そこで目が覚めちゃって」
香織は首を横に振り、グラスの氷をカランと鳴らす。
「そうなんですか…」
美弥子は心底残念そうに言うと、グビッとグラスを空にして言葉を続ける。
「あー。なるほど!今日のため息の原因が今朝見た夢ってことは『手を繋ぎたかったな~』て思ってたんですね~」
さっきの声とは打って変わってイタズラめかし、香織を上目遣いにニヤッと笑う。
席が向かい合わせでなく隣同士であれば、間違いなく肘で香織をグリグリしていただろう。
「そう…と言えばそうだし、違うと言えば違うかな」