運命の人
Barさざなみにて


タクシーを降りた二人は『Barさざなみ』へと入る。


二人で飲むときの定番コースだ。


───カランカラン


ドアに掛けられた鐘を鳴らして入ると「いらっしゃい」とマスターの梶谷恵が出迎える。


恵は34歳独身。名前から女性に間違われることが多いが、黒髪に甘いマスクで気が利いて話がうまいとあって、恵目当ての客は多い。


カウンターに座った2人に恵はなにも聞かず、香織にはスクリュードライバー、美弥子には店名であるさざなみのカクテルを目の前に置いた。


「ちょっと聞いて下さいよ、恵さん。」


美弥子は恵にすかさずそう言うと、香織の今日の様子と居酒屋からここに来るまでのやり取りを愚痴をこぼしながら説明しだした。

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