運命の人


「美弥子ちゃん、僕には『私、香織さんにこんなに愛されてるんです』っていうのろけにしか聞こえなかったよ」


クスクスと笑いながら恵が言うと、美弥子は今日二度目の膨れっ面を披露した。


「もう。肝心なのは香織さんのため息をどうにかする事なんです。恵さん何か良い案は無いですか?」


「愛しの香織さんの為に?」


「恵さん!!いい加減にしてください!」


美弥子がそろそろ本気で怒りそうになってきたので、恵は「ごめん」と真顔で伝え、またしても思考の渦をさまよっている香織に話しかけた。


「ため息云々は難しいけど、香織ちゃん、そのデートの相手ってどんな人?」


「それそれ。私も聞きたい」


すっかり戻った美弥子も興味津々で香織に顔を向ける。


「え?何を?」


恵の質問は聞こえておらず、美弥子の声で現実に戻った香織は、美弥子が何を聞きたいのかがわからず、間抜けな顔で固まってしまった。



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