王龍×姫龍


階段を登りきると騒がしかった。きっと今は休憩時間。

目を閉じ胸に手を当て深呼吸をする。

大丈夫、不安なんて、ない。ゆっくりと瞼を開けば茶色ではなく紅蓮の瞳があった。



ぺたり、廊下を歩く。
私に気付いた人が振り返り私を見る。違う、私の瞳を見る。

教室に入ると騒がしさがなくなり一気に静寂に包まれる。
重い。今にもここの空気に潰されてしまいそうだ。


席についても特にすることがなく、机に腕を置き俯せる。
するといろんな人のひそひそとした話し声が聞こえる。

予想はしてたよ。きっとこうなるってわかってたから。
そして聞こえた、

「気持ち悪い」

グサリ、心臓に何かが突き刺さる。そして次々に聞こえる声。

「嫌だぁあんな色」
「自分があんな色だったらマジ死にたい」

きっと皆は聞こえてないって思ってんだろうね。

今までこんな経験はたくさんあった。でも、仲良くしてた人が急に自分を拒絶するって思った以上にきつい。でも、大丈夫。耐えられる。我慢すればいいだけだから。

「桜義」

ドキッ
心臓が飛び跳ねた。誰か今名前呼んだ??

ゆっくり顔をあげると、

『佐々木…』

昨日ぶつかった男子、佐々木がいた。

「昨日悪かったな。ごめん」

…は?全然意味がわからないと思ってるとそれが顔に出てたのか、

「昨日ぶつかったじゃん」

あ、なるほど。って

『それだけ?』




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