琥珀色の誘惑 ―日本編―
カイサル国王陛下は現在七十三歳。

ミシュアル王子は国王の長男で六番目の子供。それも、四十五歳の時に初めて産まれた男の子ということになる。

イスラム社会において後継者たる男子がいないのは、非常に肩身の狭い立場だという。ましてや王位継承順位第二位の王弟。

そこに産まれたミシュアル王子は父親にとって宝物も同然であった。


そうでなければ、日本人の血を四分の一持つ王子の存在は、良く思われなかっただろう、とターヒルは言う。

ミシュアル王子の後、二歳下のアーディル王子、六歳下のラシード王子と続く。

ヌール・モハメッド・イブラヒーム第四夫人は向かう所敵なし、というくらい夫から大事にされた。

だからこそ、ミシュアル王子の妃に日本人女性を、などと言う我侭が聞き届けられたのだ。


そして、ミシュアル王子の立場が一変したのが八年前。


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