琥珀色の誘惑 ―日本編―
「違うんだ……。だったら行けるわけないじゃない! アルは、わたしの話なんて」

「殿下ご自身も混乱しておられるだけなんです! ……あなた様が殿下に無礼を働いた時、我々に向かって仰いました。“私の妻に銃を向けた者は、私が殺す”と」


ターヒルの言葉に、ハートのど真ん中を射られた気がした。

舞の目に、浅黒い肌の黒服の男がキューピッドに見える。


きっとあのジャガーも、本当は『ドライブデート』だったのかも知れない。
ふたりきりになって、ソフトトップの屋根を開いてくれたのも……アルなりに舞に合わせた日本風のデートだった。

おまけに舞が『白馬に乗った王子様がいい』といえば、白馬に乗って現れ……。

愛の言葉を望んだ舞に言ってくれたのも、“本物の愛”だとしたら?


ずっと「ありえない」「嘘でしょう」と思い続けた。

否定ばかりで、一度も信じようとしなかったのだ。


(落ちてきたボタ餅を食べてどこが悪いの!? 偶然でも幸運でも、わたしはボタ餅が大好きなの! 正々堂々と食べてやろうじゃないっ!)


(こうなったらクアルンまでだって追いかけてやる!)


舞は心の中でそう叫んだ。 


< 105 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop