琥珀色の誘惑 ―日本編―
テーブルの上には数枚の写真が無造作に置かれてある。

気の早い長老たちが、王の第一夫人に相応しい娘の写真を送ってきたのだ。

一様に黒いアバヤを着て、頭にヒジャブを巻いている。口と鼻はニカブで覆い、気に入った娘を、と言われてもどれも同じに見えるのが正直な所だ。


その中の誰を選んでも、ミシュアル王子の求婚であれば喜んで受けるだろう。


間違っても自国の王太子に手を上げるような真似はしない。
どんな求めにも素直に応じるはずだ。逆らわず、口答えせず、夫に従順な妻として、与えられたものを平伏して受け取る娘たち……。

そのことに覚える一抹の不安が、王子の胸を黒く染めた。



『では、私はいつも通り……。しばしお待ちを』


そんな言葉と共に、ヤイーシュはリビングから出て行ったのである。


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