琥珀色の誘惑 ―日本編―
三十階建のホテルを真下から見上げると、手前に倒れて来るような錯覚がした。

舞はターヒルに教えられた通り、そのホテルのフロントを訪れたのだった。


「あ、あの……スイートの笹原さんを訪ねて来たんですが」


そのセリフは、ミシュアル王子にとって、私的な友人や親戚が訪れる際の符丁になっているという。

舞は、ターヒルにもついて来て欲しいと頼んだのだが……「私も男ですので」と断わられてしまった。

どうやら、ミシュアル王子の許可なく、舞と車に同乗したりしたら、とんでもないことになるみたいだ。


舞は勇気を振り絞り、たったひとりでここまで来た。


先日のホテル同様、支配人が出て来て上まで案内される。

でも先日と違ってそれほどへりくだった態度ではなかった。寧ろ上から目線なのが気になる。

舞はその理由を後で知ることになり……。


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