琥珀色の誘惑 ―日本編―
この国で女性を調達したことはない。

婚約者と同じ日本人を相手にすることだけは、避けてきたからだ。


『殿下、もう婚約者ではございません。思い切るためにも、一度日本人女性を相手にされてはいかがでしょうか?』


そんなヤイーシュの言葉に思わず頷いてしまった。


そういった相手はいつも側近が調達する。

あらゆる危険を考え、下着の一枚、ヘアピンの一本まで取り除き、全身を隈なく検分してからミシュアル王子の許に届けられるのだった。


だが……どうも今夜は気乗りがしない。


やはり、やめにしよう。女には同等の金を払えば文句はないはずである。ミシュアル王子は内線でSPを部屋まで呼んだ。


『ヤイーシュに伝えろ。伽の女は不要だ。金を持たせて追い返せ』

『……は、あ』

『どうした?』

『その、お越しになられた女性ですが……』


SPの報告に、生まれて初めてミシュアル王子は真っ青になった。


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