琥珀色の誘惑 ―日本編―
たくさんのマイクを向けられた時、彼の口から流れ出た言葉はなんとアラビア語。

だが、同時に日本語訳のテロップが流れる。これを見る限り、生放送ではないらしい。


『日本の皆さんに残念な報告がある。この国から、ひとりの美しい女性がいなくなる。なぜなら、彼女は私の花嫁となり、クアルン王族の一員となるからだ』


このままでは済まさない――ミシュアル王子はそう言った。

それが確かに、こんな風に発表されてしまっては、舞にノーと答える余地などない。

でもこれを、愛だと思っていいのだろうか?

王子を侮辱した舞に対する制裁ということも。


しかし、そんなことを悠長に悩んでいる状況ではなかった。電話がけたたましく喚き始め、ドアホンが鳴り、玄関ドアが叩かれた。


「ま、まい……話はナシになったと、お前」


父は茫然自失のまま舞に問い掛ける。

昨夜、舞が父に告げたのはその一言だけだ。


「嘘は言ってないわよ。だって……こんなことを言い出すなんて」

「姉貴、外!」


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