琥珀色の誘惑 ―日本編―
「お前は私の求婚を断わり、大嫌いだと言った。だから私はお前を諦めたのだ。だが立場上、妻を娶らぬわけにはいかぬ。薦められるまま一族の娘を……そう思った時、再びお前は現れて、私の妻になりたいと言った――」


ミシュアル王子は本国の許可も得ず、長老たちの警告も無視して、王太子として正式に結婚を発表した。
まさに“綸言(りんげん)汗の如し”であろう。


「私は程なく即位することが決まっている。王としての立場は全てに優先する。だが、お前の願いは何でも叶えるつもりだ。何をどうすれば、お前は私を敬い、身も心も捧げるのだ。言ってみろ!」


「う、浮気しないで欲しいんだけど……」

「浮気とはなんだ?」

「だからっ、娼婦を買ったりしないで! これまでのことはともかく……わたしの為でも嫌なの!」 

「当たり前であろう。花嫁の純潔を汚さぬ為に黙認されていることだぞ。婚外交渉など初犯はムチ打ち、二度目は死刑だ!」


ミシュアル王子の答えに、舞の涙は完璧に引っ込んだ。


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