琥珀色の誘惑 ―日本編―
ミシュアル王子は舞の問いに眉間を引き攣らせつつ、ゆっくり深呼吸をしてから答えてくれた。
「私は、冗談は言わない。そして、身分を詐称するような愚かな真似もしない」
一瞬、ほんの一瞬だが、琥珀色の瞳に怒りの色が重なる。
その目はこれ以上の侮辱は許さない、と告げていた。
「そんな、バカな、あり得ないわ」
「今から十五年も前に決まったことだ。舞、君は一ヶ月後に、私の妻になる。それはすでに決定事項だ。だが、我が国では、純潔でない娘が花嫁になる資格はない。昨今の日本人女性は、非常に乱れているというではないか。私は汚れた娘を妃に持つ気はない。君には純潔を証明する検査を受けてもらう。よいな!」
舞は口を閉じることも忘れ、ポカンとしたまま、その話を聞いていた。
目の前に本物の王子様がいる。それだけで充分まともなじゃない。
その王子様が、一ヵ月後に舞を妻にすると言うのだ。
信じろと言うほうが無茶だろう。
しかも“処女”かどうか検査しろ?
正気の沙汰とも思えない。
とんでもない状況に追い込まれ、理不尽な要求を突きつけられながら……。
(王子様って、なんでこんなキレイな日本語を話すんだろう?)
現実から逃避したい気分の舞であった。
「私は、冗談は言わない。そして、身分を詐称するような愚かな真似もしない」
一瞬、ほんの一瞬だが、琥珀色の瞳に怒りの色が重なる。
その目はこれ以上の侮辱は許さない、と告げていた。
「そんな、バカな、あり得ないわ」
「今から十五年も前に決まったことだ。舞、君は一ヶ月後に、私の妻になる。それはすでに決定事項だ。だが、我が国では、純潔でない娘が花嫁になる資格はない。昨今の日本人女性は、非常に乱れているというではないか。私は汚れた娘を妃に持つ気はない。君には純潔を証明する検査を受けてもらう。よいな!」
舞は口を閉じることも忘れ、ポカンとしたまま、その話を聞いていた。
目の前に本物の王子様がいる。それだけで充分まともなじゃない。
その王子様が、一ヵ月後に舞を妻にすると言うのだ。
信じろと言うほうが無茶だろう。
しかも“処女”かどうか検査しろ?
正気の沙汰とも思えない。
とんでもない状況に追い込まれ、理不尽な要求を突きつけられながら……。
(王子様って、なんでこんなキレイな日本語を話すんだろう?)
現実から逃避したい気分の舞であった。