琥珀色の誘惑 ―日本編―
でもクアルン王国のあるアラビア半島に川がない、と聞き……舞はその事実に驚愕する。


クアルンにとって、水源のほとんどが一万年以上前に降った雨と言われる化石水だ。
だが当然、都心部はそれだけでは賄いきれない。
海水淡水化プラントなしでは生活できないのである。
その費用が輸送費も含めて一リットル辺り日本円で百円ちょっと……なんと、ガソリン代に匹敵する金額だ。
しかも、九割以上が国家負担と言うのだから、まさに『金の如く湯水を使うな!』ってとこだろう。


だが、ミシュアル王子は別の意味で舞の言動に呆れ返っていた。


「舞……君は大学まで進み何を学んでいるのだ。世界の地理すら覚えていないのか?」


とは言うが、日本の大学生の何パーセントが日本地図に県名と県庁所在地を間違いなく書き込めるだろうか?

ましてや、世界地図に正しい国名を全て書き込める人間など……。


「少なくとも、一ヶ月後までには我が国の主要都市名と王族の名前を覚えるのだ。アラビア語も挨拶くらいはできる様に」

「待ってください! どうしてわたしなんですか? 父の話では、日本人なら誰でも良かったみたいな感じじゃないですか? それが」

「私に何の不満があると言うのだ。言ってみろ!」


舞の言葉はナイフで切り裂くように遮られた。


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