琥珀色の誘惑 ―日本編―
舞は勉強机の前に座り、引き出しを開け……ボーッと見つめていた。

中には昨日父から渡されたクアルン王国のパンフレットが。

ミシュアル王子の端正な横顔がそこにあった。


あの唇が……舞の唇と重なったのだ。


「シーク・ミシュアル……アル、か」


指先で王子の唇をなぞった。

舞はそれだけでドキドキして……。


その瞬間、背後のドアが一気に開いた!


「舞ちゃん! お母さん……お母さん……どうしたらいいのっ」

「ど、どうしたの? スーパーが閉まってた?」

「四階の大和田さんの奥さんに言われたの。お宅の娘さん、白昼堂々と公園の真ん中で“キス”してましたよって!」


母は“キス”に力を籠めて言う。

見られてたなんて……って当たり前か。

でも、不可抗力だ。
逆らうことなんてできなかったし、第一、そんなことしたら国際問題になるような気がする。


「子供の教育上悪いから、二度とあんな真似なさらないように、ちゃんと叱っておいてください。って……お母さん、どう答えたらいいのか」


と言いながら、母は泣き始めた。


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