琥珀色の誘惑 ―日本編―
「それは……でも五歳だよ! そんな時から決められてたなんて……もう、信じらんないわよ。うちの親って何考えてんの?」


舞はテーブルにバタンと倒れこむ振りをした。
ステンレス製の簡易テーブルは、舞が本気でもたれ掛かったら簡単に壊れるだろう。
それくらい粗末な作りであった。

テーブルの表面はひんやりと冷たい。

舞はそれを頬で感じつつ、黙り込む。


すると、桃子が小首を傾げ、可愛らしい仕草で舞に尋ねた。


「どうしたの? お姫様になりたくないわけ? 産油国のシークで王子様なんて、超セレブだと思うわよ」

「桃子だったら、なりたい?」

「うーん、私には彼がいるから……」

「はいはい。どうせ、わたしには誰もいませんよ」


舞はブスッとした顔で答える。

ふたりとも今日はジーンズだ。
なのに、どうしてこうも印象が違うのだろう。

舞の目に、桃子の短めのジーンズの裾から、ほっそりした足首が見えた。
その先にはスパンコールの付いた黒いサンダルを履いている。


同じ――いや、同じな訳がない。


桃子のスリムタイプに比べて、舞が穿いてるのはオバサンタイプのダボッとしたジーンズである。
スリムやストレートでは舞のヒップが入らないからだ。
ヒップの入るものはウエストが緩く……ベルトで不恰好なほど縛らなくてはならない。

これを同じと言ったら叱られるだろう。 


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