琥珀色の誘惑 ―日本編―
それに本音を言えば、連絡が途絶えたことをかなり気にしていたのだ。


あのキスが、ミシュアル王子のお気に召さなかったのかも知れない。
それか、こんなオトコオンナを妻にすることが嫌になったのだ。

既に決められたこと、とはいえ、今頃、王子は婚約を白紙にするために、走り回っているに違いない。


世の中の男性はみんな、九号のワンピースと二三センチの靴が入る女性を妻にしたいと思っている。
二五センチでもキツイ舞など論外であろう。



「どうでもいいよ、別に。どうせハーレムには何人も女を囲ってるんだろうし……。いくら相手がいなくても、第四夫人なんてゴメンだわ」

「四番目って言われたの?」

「言われてはいないけど……でも、メチャクチャ女には慣れてる奴だもの。でなきゃ、あんな」


キスはしない――と言いかけて慌てて黙った。


「でも……そういうのって簡単になしにできるものなわけ? 舞から断ってもいいの?」


やはり桃子も国際問題になることを心配しているみたいだ。


「平気よ。どうせ、向こうから断わってくるわよ」


舞が軽い調子で答えた、その時――


「断われる訳がなかろう! 舞、お前はなんと往生際の悪い女だ」


突如、心底不機嫌そうな声が舞の背後で響いた。


それは午後のカフェテラスにおよそ不似合いな声。

椅子から飛び上がり、振り返った舞の目に映ったのは一週間ぶりに再会した王太子、シーク・ミシュアルであった。


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