琥珀色の誘惑 ―日本編―
「三週間って……わたしには大学が」

「クアルンにも女性のみが学ぶ大学はある。医学や教育、政治経済、様々な分野に女性も進出している。お前のために、心理学部を設けよう。舞、学習意欲があれば何処にいても人は学べる」


その言葉に舞の胸はドキンとした。

どんな状況に置かれても学ぶ意思があるのか、と問われたら……答えられない。

そこまで明確な目的意識を持って、スクールカウンセラーを目指している訳ではなかった。

自分ひとりのために、大学に学部まで新設するという。
それはあまりに大ごとで、嬉しいというより申し訳ない。また、そんなふうにしか思えない自分が、舞は恥ずかしかった。



その微妙な空気を読んだのだろう。桃子がふいに口を開く。


「あ、あの……お茶の最中なんですが、よろしければご一緒に如何ですか? コーヒーでよければ買って来ますけど」

「コーヒー? 日本でコーヒーと呼ばれるものはコーヒーではない。あんなものを口にするくらいなら、私は水でよい」


反省モードで落ち込んでいた舞だが、ミシュアル王子の言葉を聞き一気に浮上した。

本領発揮の王子の台詞に面食らっている桃子をその場に残し、「わたしが行って来るから」と声を掛け、自動販売機に走る。

ドリンクを販売しているカウンターで「すみませんが水をください」と言うよりマシだろう。


そして、舞がペットボトルの水を手に戻った時――。


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