琥珀色の誘惑 ―日本編―
「舞の隣に座るなっ! この無礼者めが!」


ミシュアル王子は血相を変えて恫喝した。

自身の椅子を蹴るように立ち上がり、男子学生から椅子を奪い取る。


「ちょ……ちょっと!? 何してるんですか?」

「お前もお前だ。男を隣に座らせるなど、言語道断だ!」

「は? そんな……席くらい」

「我が国では、女は人前で夫の隣以外に座ってはならない」


憤然と言い返す王子に、舞は声を潜めて反論した。


「ここは日本です。それに、夫って」

「ここが何処であれ、私は母国の教義に基づいて行動する。何の制約も受けない」


なんという自尊心の高さだろう。
舞には王子のこだわりが理解できず、無言のまま横を向いた。

母国なんて、日本のことをそんな風に考えたこともない。

生まれながらの王族ゆえか。
それとも国民性というものだろうか?

その場にいた全員が呆然としていた。


< 53 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop