琥珀色の誘惑 ―日本編―
早く帰ったのは門限のせいだけじゃない。


(――あんたたちがトイレで話してた卑猥な冗談のせいよ!)


そう言えたらどんなにか気分が楽だろう。


隣のミシュアル王子にチラッと視線をやるが、何と涼しい表情で水を口に運んでいる。


(何考えてるのよっ! 妻同然の女が馬鹿にされてるのが判らないわけ!?)


苛立つ舞の正面に座る桃子が、舞に助け舟を出した。


「ちょっと、あなたたち。親戚の方がいらっしゃるのよ。そういう話は失礼でしょう? 他に話がないなら、帰ってくれない?」


先輩の彼女に言われ、ひとりは口を閉じた。

だが、例のトイレにいたふたり組はさらに余計なことを口にする。


「たださぁ、ハタチ過ぎてもバージンだと、重くねって話」

「バカ言うなよ。バージンなんて失礼だろ」


それもそうか――とふたりは声を合わせて笑う。


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