琥珀色の誘惑 ―日本編―
どうせいつものことだ。合コンなんてしようとしたから……。
何をしたって、所詮アヒルはアヒル。
おとぎ話のように、白鳥に変身したりはしない。

白馬に乗った優しい王子様がやって来るはずもなく……せいぜい特注ジャガーに乗った傲慢シークに振り回されるのが関の山。

でも、少なくともミシュアル王子について行ったら、“一生純潔”にはならないだろう。

そんな馬鹿なことをボンヤリと思い浮かべた。



直後、ガタン! と舞の右横で椅子が倒れる。


ミシュアル王子はサングラスを外し、大股でタケシに歩み寄ると、その襟首を一気に締め上げた。


「ア、アル!?」

「よくも舞を笑ったな。貴様の態度は不敬罪に相当する!」

「待ってアル。やめてっ!」


そのただならぬ様子に、舞も椅子を蹴って立ち上がった。

舞はふたりに割って入ろうとするが、


「お前は近寄るな! 我が国では妻や婚約者を笑われ、黙って引き下がる男はいない!」

「でもここは日本なんだってば!」


“不敬罪”なんて法律、日本にはなかったよね?

慌てて思い出そうとするが、元々刑法なんて一般人の舞が覚えているはずがない。

その瞬間、ミシュアル王子が舞を振り返って言った。


「何度も言わせるな! ここがどこであれ、お前を守るのは私の権利だ!」


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