琥珀色の誘惑 ―日本編―
サングラスがアスファルトの地面に落ちて転がる。
周囲の気温は一気に五度ほど上昇した。


「舞っ!」


テーブルの向こうから桃子の悲鳴が聞こえた。

当然だろう……相手は一国の王太子である。

男尊女卑が当たり前の国の人を公衆の面前で殴ったのだ。お咎めなしで済むはずがない。


一瞬でSPたちは殺気立った。

ごく自然な流れで、彼らは上着の中に手を差し込む。
さすがに人目があるせいか、抜いて構えることはしなかった。

さっきと同じSP、おそらく護衛官の中でリーダー的な存在なのだろう。

彼が舞に達者な日本語で警告を発した。


「ミス・ツキセ。あなたはまだ、民間人です。あなたが再び手を上げたら、撃ちます。日本は、それを許すでしょう」

「だから何? 好きにすれば? わたしは誰のモノでもない!」 


王子は舞を見下ろしたまま何も言わない。

すると、「ミス・ツキセ。これは警告です。手をテーブルに置いてください」


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