琥珀色の誘惑 ―日本編―
「どうしたの、遼? 何かあったの?」

「遼、大丈夫か?」


舞は“結婚”をひとまず横に置き、遼を気遣った。
父も同じらしい。

だが、青褪める遼の返答は、その場の話題を“結婚”に戻すものだった。


遼はドアに張り付いたまま、どうにか呼吸を整え、口を開く。


「来てる。……道路を歩いてた」

「は?」

「だから、来てるんだって!」

「だから、何がよっ!」

「あのちょっとおかしいシークに決まってるだろっ! 早く行けよ。あのまま放っとくとヤバイぜ」


舞は嫌な予感がした。

でも、ミシュアル王子が来ているなら、月瀬家が出て応対しないわけには行かない。


「お、とうさんも来てよね」

「父さんもかっ?」


当然だろう。
どんな奇々怪々な事態でも、この期に及んで父だけ逃げるなんて冗談じゃない。


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