琥珀色の誘惑 ―日本編―
「結婚相手は母親同士が話し合って決めます。決められた娘の父親に、男は結婚の許可をもらいに行きます。娘の父親が許せば、父親か男の兄弟が立会い、娘の顔を見て話ができるのです」


ターセルの返事に舞は状況も忘れ呆然とした。


とりあえず、それが正式な結婚のルールらしい。

もちろんすっ飛ばして深い関係になってから、慌てて両家で話し合い結婚に至るケースもあるというが……。

それが世間にバレたら“一族の恥”となる。

他に未婚の娘がいたら、その縁談にまで響くという。



クアルンでは男女は小学校から完全に分離される。
娘は家族ですら男性には一切顔を見せないのだ。
最近では、女性専用のショップやレストランがあり、そこなら未婚女性でも女同士で外出が可能になった。
逆に言えば、一般の店は男性の付き添いなしには入ることもできない。

反抗心のある若い娘の中には、兄弟のトーブを着て男装して出掛ける者もいるという。
だが、見つかれば宗教警察に捕まるか、周囲から『あばずれ』と呼ばれ、普通の結婚ができなくなることもある。


日本人の舞にはバカバカしいと思うが、それがクアルンの常識だった。


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