琥珀色の誘惑 ―日本編―
その一方で、売春などの風俗業も存在する。
警察の目を盗み、ちゃっかり利用している男性は多いという。

だが、どうやらこのターセルという男は敬虔なムスリムで、堅物のようだ。


「未来の王妃たる者が、なんというはしたない真似を。ミス・ツキセ、少しはお立場をお考えください」

「何度も言ってるけど、ここは日本なの。で、わたしは日本人なんだってば。この国では結婚を決める為にデートするんだから」


ターセルは舞の言動にショックを受けていた。

気持ちは判るが、お互い様というやつだろう。



最上階のスイートは一般に開放されていない。

“プレジデントスイート”と呼ばれ、世界中の王族がお忍びで利用する部屋だった。

広いリビングにはペルシャ絨毯が敷かれ、中央に応接セットが一つ置かれている。
ソファに掛けて待つように、ターセルから指示されたその時だ。


――カチャ。


奥の大きな扉が開き、ミシュアル王子が姿を現した。

腰に白い布を巻いただけの格好に、舞は息を呑んだ。


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