琥珀色の誘惑 ―日本編―
「ねえ、舞。あの王子様って、舞のことを本当に好きだったんじゃない?」

「まさかっ!?」


桃子の考えを舞は即座に否定した。

例のオープンカフェ騒動から、舞は授業が始まる直前に姿を見せ、終わったら即行で大学内からいなくなる、というのを繰り返していた。

舞の純潔問題なんて、女の子同士なら興味はないはずだし、みんなすぐに忘れるわ……というのは甘かった。

女ばかりだからこそ余計に、舞の傍にいた正体不明のデカイ親戚、の噂は広がる一方なのだ。

おまけに、普段は忘れられている“旧華族”の肩書きまで色々言われるようになった。


「舞って旧華族の血筋なんだって?」

「全然見えなーい」


見えるはずがない。

舞自身、意識したこともないし、ごく普通の生活を営んでいる。

制度の廃止から半世紀以上も経っているのだ。とくに、なんちゃってお嬢様の集う聖麗女学院では、浮くだけだろう。


だが、あのプレジデントスイートの一件以降、大学も休んでいる。

そんな舞を心配して、桃子が自宅を訪れたのだった。今、ふたりは舞の部屋で話している。


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