琥珀色の誘惑 ―日本編―
明日には帰国するという。逢いに行くなら今夜しかない。

ただ、今夜ミシュアル王子がどこに滞在しているか、一般には公開されてはいなかった。

おそらく、この間のホテルとは違うだろう。

非公式が公式になったことで、もう一度大使館にアタックするのは躊躇われた。



「……ねき。姉貴!」

「へ?」

「飯粒数えながら食うなよ。こっちの気が滅入る」


遼が眉間にシワを寄せ、舞を見ていた。
どうやら、ご飯茶碗を抱えたまま、一粒ずつ口に運んでいたらしい


「駄目よ、舞ちゃん。ちゃんと食べなきゃ」


母が元気のない舞を叱咤した。

そして、「大丈夫だから、安心なさい、舞ちゃん」とニッコリ笑う。


「何が……大丈夫なわけ?」


この母の言動は時々意味不明だ。


「一度迎えに来た王子様はね、お姫様を放り出したりしないものよ」


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