琥珀色の誘惑 ―日本編―
「母さんっ!」
父は母に目配せする。
ミシュアル王子のことは話題にするな、と言いたいらしい。だが、そんなことに気がまわる母ではない。
「あら、お父さん、おかわりですか?」
などと答え、父を困らせている。
そんな母に舞は答えた。
「お母さん、あの王子様は違うよ。相手は誰でもいいんだって。きっと、手近なところで手を打つと思うよ」
「まあ!」
母の表情が変わった時、娘のために憤慨するのかと思った。ところが……。
「じゃあ、舞ちゃんも頑張らないと!」
「は?」
「折角、舞ちゃんにとって運命の王子様が現れたのよ。人に取られたら大変だわ!」
「で、でも、もうすぐ国王なんでしょ? だったらお妃候補はたくさんいるだろうし」
ダンッ! と母はテーブルを叩いた。
「舞ちゃん! “運命の愛”はね、棚から落ちてくるのを待っていたら、誰かに食べられちゃうのよ」
ぼた餅じゃないんだから、と思いつつ……。
でも、母の言葉は胸に響いた。
確かに、舞の中で「このままじゃイヤだ!」と叫んでいる声も聞こえる。
「わ、わたし、やっぱりもう一度……」
舞が立ち上がったその時、まるで運命のように、玄関のチャイムが鳴ったのだった。
父は母に目配せする。
ミシュアル王子のことは話題にするな、と言いたいらしい。だが、そんなことに気がまわる母ではない。
「あら、お父さん、おかわりですか?」
などと答え、父を困らせている。
そんな母に舞は答えた。
「お母さん、あの王子様は違うよ。相手は誰でもいいんだって。きっと、手近なところで手を打つと思うよ」
「まあ!」
母の表情が変わった時、娘のために憤慨するのかと思った。ところが……。
「じゃあ、舞ちゃんも頑張らないと!」
「は?」
「折角、舞ちゃんにとって運命の王子様が現れたのよ。人に取られたら大変だわ!」
「で、でも、もうすぐ国王なんでしょ? だったらお妃候補はたくさんいるだろうし」
ダンッ! と母はテーブルを叩いた。
「舞ちゃん! “運命の愛”はね、棚から落ちてくるのを待っていたら、誰かに食べられちゃうのよ」
ぼた餅じゃないんだから、と思いつつ……。
でも、母の言葉は胸に響いた。
確かに、舞の中で「このままじゃイヤだ!」と叫んでいる声も聞こえる。
「わ、わたし、やっぱりもう一度……」
舞が立ち上がったその時、まるで運命のように、玄関のチャイムが鳴ったのだった。