孤独な美少女




「あの…」




しばらく歩いていると、彼女が声をかけてきた。




「どうした?」

「あたし…っ高野梨花(タカノ リンカ)って言います!」



…は?、ああ…名前か。



「あぁ。俺は──…九条優哉」




敢えて男の方を言った。


本名は信用した奴にしか教えねえ。


───“家”のことがバレるから。



そんな俺に梨花は少し不満そうにしていた。


しかし俺に言う様子がないのが分かったのか、深くは聞いてこなかった。




「…じゃあ、優さんですね」

「ゆう?つかタメだろ。さん付けなくていい」

「男でも女でも呼べるじゃないですか。…じゃ、優って呼びます…」




そう言って梨花は少し照れ臭そうに笑った。


コイツ、綺麗な顔して笑うんだな。




「ん。…あ、ここだろ?───って…」




着いた、とその学校を見れば見覚えが。


……嘘だろ?







「はい。って、え?どうかしました?“桜美坂”ですけど…」




そんな梨花の言葉は聞こえてなくて、ただただ俺は目の前の学校を見て立ち止まっていた。




だってここは────…





< 22 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop