孤独な美少女
「あの…」
しばらく歩いていると、彼女が声をかけてきた。
「どうした?」
「あたし…っ高野梨花(タカノ リンカ)って言います!」
…は?、ああ…名前か。
「あぁ。俺は──…九条優哉」
敢えて男の方を言った。
本名は信用した奴にしか教えねえ。
───“家”のことがバレるから。
そんな俺に梨花は少し不満そうにしていた。
しかし俺に言う様子がないのが分かったのか、深くは聞いてこなかった。
「…じゃあ、優さんですね」
「ゆう?つかタメだろ。さん付けなくていい」
「男でも女でも呼べるじゃないですか。…じゃ、優って呼びます…」
そう言って梨花は少し照れ臭そうに笑った。
コイツ、綺麗な顔して笑うんだな。
「ん。…あ、ここだろ?───って…」
着いた、とその学校を見れば見覚えが。
……嘘だろ?
「はい。って、え?どうかしました?“桜美坂”ですけど…」
そんな梨花の言葉は聞こえてなくて、ただただ俺は目の前の学校を見て立ち止まっていた。
だってここは────…