孤独な美少女
「ね、あの人…誰?」
「わ、かんない。でも…カッコイイ!」
さっき───学校の門をくぐったときから、周りの奴らからの視線がハンパない。
つうか“誰?”って…。俺、そんなに影薄いか…?
いつもの俺は前髪をそのままにして、目は隠れている。
その上、メガネをかけている。
どっからどう見ても、ダサ男。
ガラガラ、と教室のドアを開ける。
やはり教室でも、俺の正体に気づいていないクラスメート。
今の俺はメガネを邪魔だからと外し、前髪も邪魔だからとピンで上げている。
そのため素顔がバッチリ丸見えな訳だ。
「ねえ、あんな人いた!?」
「いや…見たことないよ!」
「転校生かな?」
「どうだろ…」
そんな声を無視して俺は自分の席に座る。
正直、ここまで騒がれるとは思ってなかった。
だって、整形したわけでもない。
ただ、メガネを外して前髪を上げただけ。
見たことのない奴が九条優哉の席に座っているのを見て、周りの奴らは目を見開くいている。
勇気を出したのか、一人の女が俺に近寄って来た───が。
ソイツの口を開く前に、“奴ら”の声が教室に響いた。
「おっはあ!」
「みんな元気ー?」
そう。奴らとは勿論、琥珀のこと。
デカイ声を出した魁斗と白我は、俺の姿を見た途端目を見開いた。
しかし、そんな二人とは異なって他の三人は躊躇することなくこっちに歩いてきた。
ケバいぶりっ子女の「恭弥様ぁ♪」なんて声も無視している恭弥。
ちょっと…、ほんのちょっとだけソイツが可哀相。
そして俺の席の目の前で立ち止まった三人は、
「優哉、」
俺の名を呼んだ。