この男、偽装カレシにつき
そのとき。


ドンドンドン!
扉を叩く音がして、センパイはゆっくりと唇を離した。


「隼人ー、いるかー?」


「悲鳴が聞こえたけど、チエ、大丈夫ー?」


純ちゃんたちの声で我に返る。


そうだ、私、資料室に閉じ込められて。
しかも電気が切れてパニックになってたはずなのに…。


安堵と同時に気が抜けて、その場にへたり込んでしまう私とは対照的に、


「来るの遅ーぞ。
扉壊れてんだ、早く開けろ」


橘センパイは、さっきの優しい表情は夢だったとしか思えないくらい、ふてぶてしく悪態づいてる。


しばらくして扉が開き、ようやく私たちは暗い密室から解放されたのだった。
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